フランス対ポーランドより
中央からの崩し フランスのパターン化された狙い
前半8分
裏へ抜け出すも、ここは味方とスペースがかぶってしまう。
ポーランドの守備はDFラインとMFラインがすごく近く(コンパクトな守備)、ボール付近にスペースがあまりない。
前半14分
DFラインとの駆け引き。
相手DFの裏に立ったり、前に立ったり、間に立ったりというジルーのポジショニングに注目。
守備からすると、ライン間のグリーズマンをフリーにしたくないし、ジルーにも裏を取られたくない。
DFラインの手前と裏を同時に狙うことで、相手に狙いを絞らせないことが大事。
一度グリーズマンにくさびのボールを入れて戻すことで相手のDFラインを前に誘き寄せる。
ジルーは直線的に裏に飛び出るのではなく、少し円を描くように(一度オンサイドに戻ってから出るような形)出ていくので、オフサイドトラップがかけにくい。
コンパクトに守りたいポーランドの守備ですが、DFラインが混乱してますね。
裏へのパスはその2本前に狙っていたので、タイミングが少し合わなかったよう。
前半14分
ジルーが降りてきたときは、トップ下のグリーズマンがその裏のスペースを狙う。
さっきと逆の関係。
DFラインとMFラインの間で受けようとする選手に対しては、ポーランドはCBが前に出て持たせないように対応。その裏が空きます。
前半16分
左のエンバペがライン間に入ってくるパターン。(若干、ラビオとポジショニングが被って閉まっています)
エンバペがライン間に入って、足元のパスを受けにいくときは、左サイドバックのエルナンデスが裏を狙って走ってます。ここでも下がる動きと上がる動きが連動。
ジルーのこの裏へ飛び出す動き、しつこくずっと狙ってますね。
ジルーとしては一つ前のチュアメニが前を向いた時のタイミングを狙っていました。(しかし、チュアメニはグリーズマンへの横パスを選択)
14分の時もチュアメニからの最初のタイミングでパスが出ず。
前半18分
深さを取ったり裏を狙うだけでなく、時にはポストプレーも折り込みます。
トップが下がってきた時は、2列目が裏を狙うという約束事があるので、下りも効きます。(もし下りたトップにDFが引っ付いていったらその裏へ走られるので、ついて行きづらい)
ここでは2列目のラビオが少し深さを取りにいっていました。
前半44分 先制ゴール
ライン間に下がったエンバペにDFが2人食いついてきたその裏をジルーが狙う。
繰り返し狙っていた動きがきれいに決まりました。
エンバペのトラップからの素早いパスも見事👏
CBウパメカノの高いポジション取りとチュアメニのスルーも押し込んで攻める時に有効なプレーでした。
ラビオもエンバペと被らないように退きましたね。
ポーランドの4バックに対して、フランスは前に人数をかけて5レーンを形成。それに対してポーランドの守備はワイドに広げられた上、ほとんど6バックになってしまいました。(コンパクトに守ろうとしすぎると、2ラインがくっついてしまって1ラインに吸収されがち。)中盤に制限が掛からなくなって、そこを埋めようと前に出たときに裏を取られる。チームとチームの戦術的な駆け引きです。
コンパクトにしつつライン間を捕まえようとするポーランドのバックと、その裏のスペースを突こうと狙うフランス。
ジルーの動きですが、まず狭いエリアで細かくポジショニングを取り直してますね。
DFラインを下げたくない、ボールの付近に圧縮するために前に出たり、ラインを上げようとするポーランドに対して、再三その裏を狙っていました。
ジルーは高い位置から裏へ抜け出すので、そのときにDFが付いていくべきか、それとも残ってオフサイドを狙うべきかかなり迷うような判断を強いられています。
DFの背後を取ることで相手の視野から消える動きも、マークを外す動きとして地味に効いてますね。
左サイドからのクロスへの対応
前半8分
エンバペの速すぎるスピードについていけないジルー。
「やっちまたぁ」の表情を見せます。(推測です😅)
マイナスのボールを出せると踏んでいたのか、遅れただけなのかは定かではありませんが、結果的に判断ミスでしたし、自分でも気付いてますね。
この縦突破では、エンバペでもさすがにマイナスのクロスは難しい。
また、マイナスのクロスやファーには右のデンベレが遅れて合わせることが可能。
ジルーはDFラインとGKの間、またはニアで相手DFの前を狙って、合わせられなくても潰れ役になればよかったんです。
前半9分
直後にしっかり修正するジルー。
予測して、早めに深いポジション(オフサイドポジション)を取ってから動き出します。
ジルーの前で合わせる動きによって、結果的に後から入ったデンベレのところへボールが。
マイナスのボールにはグリーズマンが入ってます。
クロスに対して、ニアサイド、ファーサイド、マイナス、この3点がタイミングよく入ってくると、分かっていてもDFからすると守りづらい。それが王道。
右サイドからのカットインを活かす動き
右サイドのエンバペは縦突破でしたが、左サイドのデンベレはカットインが得意。
カットインの動きへの対応を見てみましょう。
前半14分
カットインから左のエンバペへのパス。
トップのジルーは、まず縦ドリブルで突破することを考えて、中で合わせるような準備を(プルウェイ)。
切り返した後は、ボールが遠い時は中でクサビで待ちつつ、中へ入ってきたら裏へ抜ける動きもできるような感じで待ってます。
前半16分
カットインからデンベレのシュート。
ジルーは右サイドへ流れて、デンベレにカットインできるスペースを与える。
後半31分 フランスの2点目のシーン
ジルーは最初はデンベレが縦に突破する選択肢もあるので、プルアウェイで合わせてます。
カットインしてきたら(縦ドリブル突破がなくなるので)右サイドへダイアゴナルラン。(最初は少しクサビもできる感じで)
自身へのパスコースを作りながら、デンベレにカットインのスペースやエンバペへのパスラインをつくりだしてます。
カットインとジルーの動きでDFが引き付けられ、フリーになったエンバペへタイミングの良いパス。
サッカーでもフットサルでも3対3の王道と言える崩し方ですが、シンプルなことをシンプルにできるのが本物です。
フランスの攻撃の特徴としては、左サイドでは(サイドバックやインサイドハーフも高い位置で絡んで)比較的人数をかけてサイドの深い位置や中央の狭いエリアを攻略する、または敵を引き付けるような狙い。逆に、右サイドではデンベレを孤立させるようにしてスペースを与えることが多いですね(アイソレーション)。おそらく自チームの選手の適正に合わせてデザインされた戦い方でしょう。
ハイライトで見ると、エンバペやデンベレなどの個人の強さが目立ちますが、よく見てみると個々の強さを引き出すためのチームのデザインがあってこそですね。
あとは、個々の選手がゲームの中で修正してったり、状況に合わせていくという力もさすがです。
サッカーは個の力だけではない
比べて見てほしいトップの動きがこれ。
課題をあげると、マークを外せていない。常にDFの視野にばっちり入ってる。裏を取れない。2列目との関係性が薄い。
せっかく相手DFラインとGKの間にいいボールを入れられても、これだと美味しいところで合わせる人がいません。
トップのこのポジショニングや動き、相手からすると怖くないんですよね。
2列目の選手もサイドの選手との関係はよく意識してるようですが、トップとの関係性が希薄。サイドでチャンスを作れても、シュートや得点にはつながりづらい関係の作り方だと思います。
惜しいところまでは行っているので、もう一つ、前での関係性がほしい。
そんなふうに思えました。